中国のEVメーカーを調べると、BYD、NIO、Li Auto、Xiaomiなどと並んで、必ず名前が出てくるのがXPENG(小鵬汽車)です。

XPENGは単にバッテリーで走る車を作る会社ではありません。創業時からソフトウェア、運転支援、車載AI、急速充電を重視し、「自動車を走るスマートデバイスへ変える」ことを目指してきたメーカーです。

一方、ブランドの歩みは順調一辺倒ではありません。商品構成や販売面で苦戦した時期を経て、低価格のMONA M03、ファミリー向けのP7+やG6・G7、大型MPVのX9を投入。2025年には年間納車台数を42万9,445台へ伸ばし、中国の新興EV勢力の中で存在感を取り戻しました。

この記事では、XPENGがいつ、どのように始まった会社なのか、中国でどれほど売れているのか、現在の主力車種は何か、そして評判と注意点を整理します。

まず知りたいこと回答
XPENGとは中国・広州で生まれたスマートEVメーカー
創業2014年
主な特徴AI、運転支援、車載ソフトウェア、800V急速充電
2025年の納車台数429,445台
量販の中心MONA M03、P7+、G6・G7
上位モデルP7、G9、X9、GX
日本での正規販売2026年6月時点で公式な販売案内は確認できない

XPENGは2014年に広州で始まった

XPENGの前身は、2014年8月に中国・広州で始まった電気自動車プロジェクトです。

創業に関わった夏珩氏と何涛氏は、いずれも自動車開発の経験を持つ技術者でした。そこへ、UCWebの共同創業者として知られる何小鵬氏が出資者として加わり、後に会長兼CEOとしてブランドを率いるようになります。

会社は2016年に試作車を公開し、2017年に最初の量産車を生産。2018年12月にはSUV「G3」の販売と納車を始めました。2019年にスポーツセダン「P7」を発表し、2020年4月に発売したことで、XPENGの名前が広く知られるようになります。

資本市場への展開も早く、2020年8月にニューヨーク証券取引所、2021年7月に香港証券取引所へ上場しました。その後はG9、G6、X9、MONA M03などへ車種を広げています。

XPENG P7のラインアップ XPENGを代表するスポーツセダン、新型P7。画像: 小鵬汽車公式サイト

XPENGは何が得意なメーカーなのか

XPENGの特徴は、車体やモーターだけでなく、車載OS、運転支援、AIチップ、電子電気アーキテクチャまで自社で深く開発していることです。

市街地や高速道路で使う高度運転支援「XNGP」、AIモデルを活用した「VLA」、自社開発のTuring AIチップなど、ソフトウェアをブランド価値の中心に置いてきました。OTA更新によって、納車後も車載機能を追加、改善する考え方も早くから採用しています。

もう一つの柱が充電性能です。主力車には800V高電圧プラットフォームと5C対応バッテリーを広げ、短時間で充電できることを強く訴求しています。2025年末時点で、中国国内の販売店は721店舗、進出都市は255都市。自社運営の充電ステーションは3,159カ所まで増えました。

ただし、XNGPやVLAは市販車の完全自動運転を意味しません。利用できる機能は車種、地域、ソフトウェアのバージョン、法規によって異なり、運転者には常時監視と安全操作の責任があります。

中国での販売は、2025年に大きく伸びた

XPENGの2025年通期納車台数は42万9,445台でした。2024年の19万68台から125.9%増え、過去最高を更新しています。

売上高は767億2,000万元で、前年比87.7%増。粗利益率も18.9%へ改善しました。販売台数だけでなく、事業の収益性が改善したことも重要です。

成長を支えたのは、2024年後半に投入したMONA M03です。従来のXPENGは技術力に評価が集まる一方、価格と商品構成が分かりにくく、販売が安定しない時期がありました。M03は価格を11万元台からに抑え、若い購入者にも分かりやすいスタイルと装備を提示。ブランドの顧客層を一気に広げました。

2026年に入ると、第1四半期の納車は6万2,682台となり、記録的だった2025年後半からは勢いが弱まりました。しかし5月には単月3万2,158台まで回復しています。中国では新車投入と値下げが非常に速いため、1年間の好調だけで長期的な勝利が決まる市場ではありません。

MONA M03:XPENGを量販ブランドへ変えた車

MONA M03は、若い利用者を中心に想定したコンパクトな電動ファストバックです。2026年モデルの中国価格は11万9,800元から15万1,800元。XPENGの中で最も手頃な入口を担っています。

低価格車ですが、単に装備を削った実用車ではありません。クーペ風の外観、大きなハッチゲート、音声操作、駐車支援、高度運転支援を組み合わせ、「スマートEVを特別な高級品にしない」という役割を持っています。

同社発表では、2025年9月までに累計納車18万台を突破しました。XPENGの販売回復を理解するうえで、最も重要な一台です。

P7とP7+:似ているようで役割が違う

P7は、XPENGのブランドイメージを作ったスポーツセダンです。2025年8月に発売された新型P7は、21万9,800元から30万1,800元。低いボディ、個性的なライト、最大820kmのCLTC航続距離、800Vシステム、5C充電、最大2,250TOPSの演算能力を特徴とします。

デザインと走行性能、最新技術を見せる役割が強く、MONA M03より上の価格帯でXPENGらしさを表現するモデルです。

一方のP7+は、名前こそ似ていますが、より広い後席と荷室を備えたファミリー向け大型ファストバックです。2026年モデルは18万6,800元からで、純電気自動車に加えてレンジエクステンダーEVも用意されました。

P7が「運転したくなる格好よさ」を売る車なら、P7+は家族で使える空間と価格を重視した車です。購入者が名前だけで比較すると違いが分かりにくいため、用途から選ぶ必要があります。

G6・G7・G9:SUVは価格と大きさで選ぶ

XPENGのSUVは主にG6、G7、G9の3段階で構成されています。

車種位置付け中国での主な価格帯向いている人
G6中型クーペSUV17万元台から価格、充電性能、日常性のバランスを求める人
G7中大型ファミリーSUV19万元台から室内空間とAI機能を重視する家族
G9上級大型SUV24万元台から乗り心地、装備、長距離の快適性を求める人

G6はTesla Model Yなどと競合する量販SUVで、XPENGの800V急速充電を比較的手頃な価格で体験できるモデルです。

G7は2025年7月に発売されました。大きなAR-HUD、広い室内、AI機能を前面に出し、G6よりも家族用途を強く意識しています。

XPENG G7 ファミリー用途と車載AIを重視したG7。画像: 小鵬汽車公式サイト

G9は装備と快適性を高めた上級SUVです。ただしGXの登場によって、現在は「ブランド最大のSUV」ではなくなりました。

2026年からXPENGは、純電気モデルだけでなく、発電用エンジンを積むレンジエクステンダーEVをG6、G7、P7+などへ広げています。充電環境が十分でない地域や長距離移動の需要も取り込むためです。

X9:大型MPVでも「運転しやすさ」を狙う

X9は、3列7人乗りの大型電動MPVです。2026年モデルの純電気版は30万9,800元から。レンジエクステンダー版も設定されています。

XPENG X9 3列7人乗りの大型MPV、X9。画像: 小鵬汽車公式サイト

中国では家族用と送迎用を兼ねる高級MPVの人気が高まっています。X9は広い車内、3列目の電動格納、800V急速充電に加え、後輪操舵を採用。大きな車体でも小回りしやすいことを特徴にしています。

箱型が多いMPV市場で、宇宙船を思わせる外観を選んだこともXPENGらしい部分です。実用性だけでなく、技術とデザインを購入理由にしています。

GX:2026年に登場した新しい最上級SUV

GXは2026年5月20日に発売された、XPENGのフルサイズSUVです。純電気版とレンジエクステンダー版を用意し、中国での発売時価格は26万9,800元から34万9,800元でした。

XPENG GX 全長5,265mmのフラッグシップSUV、GX。画像: 小鵬汽車公式サイト

全長は5,265mm、ホイールベースは3,115mm。後輪操舵、3列シート、先進的な車載AIを備え、X9の広さとSUVの走破性を一台へまとめようとしています。純電気版はCLTC最大750km、レンジエクステンダー版は電気だけで最大430km、総合最大1,585kmを公称します。

同社発表では、発売後12時間の確定注文は2万4,863台でした。ただし、これは納車台数ではありません。今後の生産と実際の登録台数を見て、最上級モデルとして定着するか判断する必要があります。

XPENGの評判が良い理由

中国でXPENGが評価されやすい点は、次のように整理できます。

  • 同価格帯で車載ソフトウェアと運転支援が充実している
  • 800Vと5C充電により、充電時間を短くしやすい
  • OTA更新が速く、購入後も機能が改善される
  • MONA M03からGX、X9まで選択肢が広い
  • 内外装が未来的で、従来の実用車とは違う印象がある
  • 高度な技術を比較的手頃な車種へ早く展開する

特にMONA M03は、XPENGの技術を20万元以上の高級車だけに限定せず、11万元台へ下ろしたことに意味があります。販売台数が伸びたのも、技術の説明より先に「価格と形が分かりやすい商品」を作ったからです。

注意したい点もある

第一に、現在の車種構成は複雑です。P7とP7+、G6とG7とG9、さらにGXが並び、純電気版とレンジエクステンダー版も増えています。選択肢は多いものの、名前だけでは車格と用途を判断しにくくなりました。

第二に、ソフトウェア中心のブランドであるため、運転支援の評価がブランド全体の印象を大きく左右します。企業が使う「AI」「VLA」「L4」といった言葉と、一般の購入者が公道で利用できる機能は分けて考える必要があります。

第三に、中国EV市場の商品更新は非常に速く、購入後に新型や値下げが発表される可能性があります。頻繁な更新は技術面では魅力ですが、既存オーナーにとっては中古価格や心理的な満足度に影響します。

また、2026年6月時点で、XPENG公式サイトには日本向けの正規販売価格や販売網の案内が確認できません。欧州や東南アジアでは展開を広げていますが、日本で並行輸入車を使う場合は、認証、充電規格、通信、地図、修理部品、保証を慎重に確認する必要があります。

まとめ:XPENGは「AIに強いEV企業」から総合メーカーへ

XPENGは2014年に広州で始まり、P7によってスマートEVメーカーとして知られるようになりました。その後は販売面で難しい時期も経験しましたが、MONA M03で価格帯を広げ、P7+、G6、G7、X9をそろえたことで、2025年の納車を42万9,445台まで伸ばしています。

現在の主力を簡単に分けると、MONA M03は手頃な量販車、P7はブランドを象徴するスポーツセダン、P7+は広いファミリーセダン、G6・G7・G9は価格別のSUV、X9は大型MPV、GXは最上級SUVです。

XPENGの強みは、AIや運転支援だけではありません。ソフトウェア、急速充電、デザイン、価格を一つの商品へまとめ、それを高級車から量販車まで早く展開できることにあります。

一方で、車種の増加、激しい価格競争、運転支援への過度な期待、海外での販売・整備網は今後の課題です。2025年の急成長が一時的な回復なのか、長期的な強さへ変わるのか。MONA M03で得た販売規模を、P7、GX、X9のブランド価値へつなげられるかが次の焦点になります。

この記事の情報源について

メーカーの公式情報を中心に、日本語・中国語を含む国内外のレビューや利用者の声を照合して構成しています。