テレビの新製品は、毎年のように「さらに明るく」「分割数が増えた」「AIで高画質になった」と説明されます。しかし2026年のソニーは、単純な数値競争とは少し違う方向を選びました。
2026年5月28日に発表したBRAVIA 9 IIとBRAVIA 7 IIで、赤・緑・青のLEDを個別に駆動する「True RGB」を採用。さらに、3つの筐体で広い音場を作るBRAVIA Theatre Trioを同時に投入し、映像と音を一体で設計した高級ホームシアターを提案しています。

True RGBを搭載するフラッグシップモデル「BRAVIA 9 II」。画像:ソニー公式サイト
True RGBは何が新しく、OLEDや一般的なMini LEDとどう違うのでしょうか。この記事では、技術の仕組みだけでなく、日本での価格、9 IIと7 IIの違い、どんな家庭に向くのかまで整理します。
20年前のRGB LEDを、2026年に再構築
ソニーとRGB LEDテレビの関係は、2026年に突然始まったものではありません。
2004年の「QUALIA 005」は、赤・緑・青のLEDを使ったバックライトシステムを採用。2008年の「BRAVIA XR1/X4500」では、RGB LEDと部分駆動を組み合わせました。その後、テレビ市場では白色LED、量子ドット、OLED、Mini LEDなどが主流になりましたが、ソニーは約20年前の考え方を現在の半導体、制御技術、映像処理で作り直したことになります。
今回の日本向け正式名称は「True RGB」。製品仕様では「RGB Mini LEDバックライト」と表記されています。
これは懐古的な復刻ではありません。高輝度化と大画面化が進んだ現在のテレビで、色をどの段階から作るべきかを改めて問い直す技術です。
True RGBは、普通のMini LEDと何が違うのか
一般的な液晶テレビは、バックライトの光を液晶パネルとカラーフィルターに通して映像を作ります。量子ドットを採用するMini LEDテレビでは、主に青色LEDと量子ドット層を利用し、赤・緑・青の色を生成する方式が広く使われています。
True RGBでは、バックライト側に赤、緑、青のLEDを配置し、3色を個別に制御します。

従来型液晶とRGB Mini LEDの構造イメージ。バックライトの段階から色を作る点が異なる。画像:ソニー公式サイト
ソニーは、この方式に「RGB Backlight Master Drive Pro」と「RGB Triluminos Max」を組み合わせました。映像の明暗だけでなく、色ごとの発光量まで細かく制御し、明るい場面でも色が白っぽく抜けにくい表示を目指しています。
たとえば、強い赤を表示する場面では、使っていない色のLEDに割り当てるはずだった電力を赤色LEDへ回すことができます。単に画面全体を明るくするのではなく、必要な色と場所へ光を配分できることがポイントです。
OLEDやMicro LEDと同じではない
名称だけを見ると、画素ごとに赤・緑・青が発光するディスプレイにも見えます。しかしTrue RGBは、あくまでRGB Mini LEDバックライトを使う液晶テレビです。
OLEDのように各画素が完全に消灯する自発光方式ではなく、液晶パネルとローカルディミングを使います。そのため、暗い背景に小さな明るい物体を表示したときの光漏れやハローを、構造上完全になくせるわけではありません。
一方で、OLEDより高い輝度を出しやすく、大画面化しやすいことが液晶の利点です。明るいリビング、スポーツ、鮮やかな自然映像、85インチを超える大画面では、True RGBの方向性が生きやすくなります。
ソニーは「色域」だけで勝負していない
RGB LEDという言葉だけなら、すでに中国メーカーを含む複数社が使っています。ソニーが差を出そうとしているのは、LEDそのものより、映像処理と補正を含めた制御全体です。
BRAVIA 9 IIと7 IIでは、RGBバックライトを制御するシステムに加え、階調の乱れを抑える処理、見る角度に応じた色補正、環境光に合わせた画質調整を組み合わせています。
テレビは購入直後だけきれいに映ればよい製品ではありません。LEDは温度によって明るさや色が変化し、長時間使用すれば個体差も生まれます。ソニーはセンサーと映像プロセッサーを使い、こうした変化を継続的に補正する設計を重視しています。
つまりTrue RGBの評価は、色域の数値だけでは決まりません。暗部から高輝度まで階調が自然につながるか、斜めから見ても色が変わりにくいか、長時間安定して表示できるかが重要です。
BRAVIA 9 II:明るいリビングを想定した最上位モデル
BRAVIA 9 IIは、65V型、75V型、85V型、115V型を用意するフラッグシップモデルです。65・75・85V型は2026年6月13日に発売され、115V型は9月19日の発売予定です。
| サイズ | 市場推定価格(税込) | 発売日 |
|---|---|---|
| 65V型 | 660,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 75V型 | 935,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 85V型 | 1,320,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 115V型 | 6,600,000円前後 | 2026年9月19日予定 |
9 IIだけの大きな特徴が「Luminance Booster Pro」と「Immersive Black Screen Pro」です。高輝度性能を引き出しながら、室内照明や窓の映り込みを抑え、明るい部屋でも黒と色の深さを維持することを狙っています。

環境光の映り込みを抑える低反射処理のイメージ。画像:ソニー公式サイト
65V型以上しかないことからも、寝室用や一人暮らし向けではなく、広いリビングで映画やスポーツを大画面で見る家庭を想定した製品です。115V型はテレビというより、住宅設備に近いサイズと価格になります。
BRAVIA 7 II:True RGBを現実的なサイズへ広げる

50V型から98V型まで展開する「BRAVIA 7 II」。画像:ソニー公式サイト
BRAVIA 7 IIは、True RGBの中核技術を残しながら、サイズと価格の幅を広げたプレミアムモデルです。
| サイズ | 市場推定価格(税込) | 発売日 |
|---|---|---|
| 50V型 | 363,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 55V型 | 385,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 65V型 | 462,000円前後 | 2026年6月13日 |
| 75V型 | 660,000円前後 | 2026年7月18日予定 |
| 85V型 | 825,000円前後 | 2026年7月18日予定 |
| 98V型 | 1,650,000円前後 | 2026年8月8日予定 |
9 IIと比べると、最上位の高輝度制御や低反射処理、内蔵スピーカー構成などに差があります。それでもRGB独立駆動、RGB Backlight Master Drive Pro、広視野角補正といった基本部分は共通しています。
日本の一般的なリビングでは、55V型または65V型が検討しやすいサイズです。特に65V型同士では、9 IIより約20万円安い価格設定です。昼間の映り込み対策や最上位の内蔵音響まで求めなければ、7 IIのほうが現実的な選択になります。
OLEDのBRAVIA 8とはどう選ぶか
ソニーはTrue RGBだけに一本化したわけではありません。有機ELのBRAVIA 8もラインアップに残し、異なる視聴環境に対応します。
True RGBが向くのは、昼間もテレビを見る家庭、照明を明るくしたまま見る人、スポーツやライブ、鮮やかな映像を大画面で楽しみたい人です。液晶の高輝度性能を生かしやすく、サイズの選択肢も広くなります。
OLEDが向くのは、照明を落として映画を見る人、暗部の階調や完全な黒を重視する人です。小さな光が暗闇に浮かぶ映像では、画素単位で消灯できるOLEDが依然として有利です。
「新しいからTrue RGBが常に上」ではありません。部屋の明るさ、見るコンテンツ、必要なサイズで選ぶべきです。
BRAVIA Theatre Trio:サウンドバーと分離型シアターの中間

中央ユニットと左右のスピーカーで構成するBRAVIA Theatre Trio。画像:ソニー公式サイト
BRAVIA Theatre Trio(HT-A8)は、横長の中央ユニットと左右2本のスピーカーで構成するホームシアターシステムです。2026年6月13日発売で、市場推定価格は308,000円前後です。
一般的なサウンドバーは、1本の筐体から左右の音を出すため、設置は簡単ですが、画面が85インチや98インチまで大きくなると音の広がりが画面サイズに追いつきにくくなります。Trioは左右のスピーカーを離して置けるため、画面の幅に合わせて音場を広げられます。
一方で、AVアンプと複数のパッシブスピーカーを使う本格的なホームシアターほど、配線や設置は複雑ではありません。サウンドバーの手軽さと、分離型スピーカーの広がりを両立させようとした製品です。

実際のスピーカー位置を測定し、仮想スピーカーを配置する360 Spatial Sound Mapping。画像:ソニー公式サイト
「360 Spatial Sound Mapping」により、部屋の形、スピーカーの位置、視聴場所を測定し、最大24個の仮想スピーカーを生成します。付属マイクとBRAVIA Connectアプリを使って音場を補正できるため、左右を完全に対称に置けないリビングにも対応しやすくなっています。
ただし、重低音を強く求める場合は別売サブウーファー、後方の実スピーカーまで欲しい場合は別売リアスピーカーが必要です。Trio単体で本格的な7.1.4chシステムを完全に置き換える製品ではありません。
ソニーの強みは、テレビ単体より「映像と音のつながり」
2026年の高級テレビ市場では、TCL、Hisense、Samsung、LGなどがMini LED、RGB LED、OLED、大画面、価格で激しく競争しています。パネルやLEDの数だけを比較すれば、ソニーが常に最も安いわけではありません。
ソニーの強みは、映画撮影用カメラ、業務用モニター、映画制作、ゲーム機、テレビ、音響までを持つことです。入力された映像をどのように分析し、どの色と明るさで表示し、音を画面上の位置にどう合わせるかを一つのシステムとして設計できます。
BRAVIA 9 IIとTheatre Trioの組み合わせは、その考え方が最も分かりやすい例です。テレビだけを高性能にするのではなく、画面が大きくなるほど不足しやすい音の幅や位置まで補っています。
発売直後に確認したい注意点
BRAVIA 9 II、7 II、Theatre Trioは、主要モデルが2026年6月13日に発売されたばかりです。6月14日時点では、長期使用による評価や独立した詳細測定はまだ十分にそろっていません。
特に確認したいのは、実際の色域と色精度、暗い場面でのハロー、斜めから見た色変化、消費電力、ゲーム時の入力遅延です。True RGBという名称だけで画質を判断せず、店頭で普段見る映像を再生して比較することが重要です。
また、大型モデルではテレビ台の幅、搬入経路、壁の強度も確認が必要です。85V型以上は、画質より先に設置条件が購入可否を決める場合があります。
まとめ
ソニーのTrue RGBは、RGBという昔からある考え方を、Mini LED、映像プロセッサー、センサー補正で再構築した技術です。バックライトから色を作ることで、高輝度でも豊かな色を保ち、大画面の明るいリビングで強みを発揮します。
BRAVIA 9 IIは低反射、高輝度、内蔵音響まで重視する最上位モデル。BRAVIA 7 IIはTrue RGBの主要技術を、50V型から98V型まで幅広く展開するモデルです。暗い部屋で映画の黒を最優先するなら、OLEDも依然として有力です。
Theatre Trioは、大画面テレビに合わせて音場を広げたいものの、本格的なAVアンプと多数のスピーカーまでは置きたくない家庭に向きます。
True RGBが高級テレビの新しい標準になるかは、今後の実測評価と価格低下次第です。ただし、テレビの競争を単純な明るさや分割数から、光源、色、視野角、音場を含む総合設計へ戻そうとするソニーの提案は、注目する価値があります。
この記事の情報源について
メーカーの公式情報を中心に、日本語・中国語を含む国内外のレビューや利用者の声を照合して構成しています。