Insta360と聞くと、少し前までは「360度カメラの会社」という印象が強かったかもしれません。ところが現在の製品群を見ると、身につけて使う超小型カメラ、一般的なアクションカメラ、360度カメラ、そして手持ちジンバルカメラまでそろっています。
その広がりを象徴するのが、GO UltraとLuna Ultraです。
GO Ultraは、服や帽子、バッグなどに装着し、撮影者の目線に近い映像を残す小型カメラです。一方のLuna Ultraは、1インチセンサーと望遠カメラを載せた3軸ジンバル式のVlogカメラ。名前には同じ「Ultra」が付きますが、実際には使い方が大きく異なります。
この記事では、中国におけるInsta360の人気や販売動向にも触れながら、2製品の特徴、評判、弱点を紹介します。さらに、GO 3S、Ace Pro 2、Xシリーズなど、ほかのInsta360製品との違いも整理します。
先に結論:2台は競合ではなく、撮る視点が違う
| 製品 | 主な撮り方 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| GO Ultra | 身につける、持ち物に装着する | 小型、ハンズフリー、自然なPOV映像 | GO 3Sより大きく、Action Podは水中不可 |
| Luna Ultra | 手に持つ、三脚に置く | 1インチ+望遠、3軸ジンバル、人物追尾 | 約233gで高価格、発売直後で評価がまだ少ない |
子どもやペットとの時間、サイクリング、旅行中の自然な目線を残すならGO Ultra。人物、料理、風景を画面で確認しながら構図を作り、ズームも使いたいならLuna Ultraです。
中国でInsta360はどれほど人気なのか
Insta360を展開する影石創新科技は、深圳発のカメラメーカーです。2025年の年次報告では、売上高は約97.41億元で前年比74.76%増。会社発表ベースでは、世界のパノラマカメラ市場で66%、親指サイズの小型カメラ市場で57%のシェアを持つとしています。
中国国内でも高い人気があります。2025年の天猫「双11」ではアクションカメラ部門の販売首位が報じられ、GO Ultraも2025年8月21日の発売直後に複数のオンラインストアで品切れになったと伝えられました。京東の主要商品ページでは、発売後に1万件から2万件規模のレビュー・コメント数が表示されています。
ただし、レビュー件数や一時的な品切れは、販売台数そのものを示す数字ではありません。Insta360はGO Ultra単体の累計販売台数を公表していないため、「何万台売れた」と断定することはできません。現時点では、発売直後から需要が高く、中国の小型カメラ市場で大きな注目を集めた製品と捉えるのが適切です。
GO Ultra:撮影を意識せず使いやすいカメラ

GO Ultraはカメラ本体をAction Podから外して使用できる。画像:Insta360公式サイト
GO Ultraのカメラユニットは約53g、サイズは46×45.7×22.4mmです。従来モデルより四角くなった本体には1/1.28インチセンサー、F2.85レンズ、5nm AIチップを搭載し、最大4K/60fps動画と50MP静止画に対応します。
最大の特徴は、やはり本体をAction Podから外して使えることです。磁気ペンダントで胸元に固定したり、クリップで帽子やバッグに取り付けたりすれば、両手をふさがずに撮影できます。

磁気マウントを使った装着例。カメラを手で持たず、撮影者の視点に近い映像を残せる。画像:Insta360公式サイト
この形が効果を発揮するのは、カメラを向けると空気が変わってしまう場面です。子どもと遊ぶ、ペットと散歩する、自転車に乗る、料理をする。スマホを構えていないため、撮られる側の表情も自然になりやすくなります。
画質と手ブレ補正は「小型だから仕方ない」を減らした
GO Ultraは、GO 3Sより大型のセンサーを採用し、暗所向けのPureVideo、Active HDR、FlowState手ブレ補正、360度水平維持を備えます。実機レビューでは、昼間の解像感だけでなく、夕方や室内で従来のGOシリーズよりノイズと白飛びを抑えやすくなった点が評価されています。
通常の旅行動画やSNS投稿なら、4K/60fpsで動きを滑らかに残せることも大きな進化です。Action Podには2.5インチのフリップ式タッチ画面があり、本体を離した状態でも構図の確認や設定変更ができます。
記録メディアがmicroSDカード式になった点も実用的です。内蔵容量を購入時に決めるGO 3Sと違い、撮影量に合わせてカードを交換できます。長い旅行や連続したイベント撮影では、この違いが効いてきます。
バッテリーと防水
公称撮影時間は、カメラ単体で最大70分、Action Pod併用で最大200分です。4K撮影ではそれぞれ最大60分、170分が目安になります。カメラ本体は約12分で80%まで急速充電できます。
本体は水深10mのIPX8防水ですが、Action PodはIPX4の生活防水です。雨や水しぶきには対応しても、Podごと水中へ入れる製品ではありません。水辺ではカメラ部分だけを外す必要があります。
GO Ultraの評判:高評価だが、万人向けではない
高く評価されているのは、画質、手ブレ補正、音声、アプリ編集、そして「撮影を始めるまでの速さ」です。Appleの「探す」に対応するため、小型機を紛失しやすい人にも安心材料があります。
一方で、GO 3Sの約39gに対してGO Ultraは約53g。数字では小さな差でも、帽子のつばや薄い服に着けると存在感は増えます。価格も日本の標準セットで64,800円と安くありません。
10-bitやLog撮影には対応せず、高ビットレートではファイル容量も大きくなります。色を本格的に作り込みたい映像制作者より、撮影機会を逃さず、すぐ編集して共有したい人に向くカメラです。
Luna Ultra:Insta360初の本格ジンバルVlogカメラ

Luna Ultra標準版。横長のデュアルカメラ部と取り外せる画面が外観上の特徴。画像:Insta360公式サイト
Luna Ultraは2026年6月10日に正式発表されたばかりの製品です。日本公式ストアでは119,800円と案内され、6月13日と14日には東京で体験イベントが行われました。この記事を公開した2026年6月14日時点では、日本では「近日発売」と表示されており、長期的な販売実績やユーザー評価を語れる段階ではありません。
それでも注目度が高いのは、Insta360が初めて手持ちジンバルカメラ市場へ本格的に入る製品であり、最初からデュアルカメラ構成を採用したためです。
1インチ広角と3倍望遠を1台に搭載

メインと望遠の2眼構成。画像:Insta360公式サイト
メインカメラは1インチセンサー、20mm相当、F1.8。最大8K/30fpsのDolby Visionと4K/120fps撮影に対応します。もう一方は1/1.3インチセンサー、60mm相当、F2.0の3倍望遠カメラです。
1倍から12倍まで画角を切り替えられ、公式仕様では6倍までロスレスズームに対応します。これにより、広角で自分と背景を一緒に入れるだけでなく、少し離れた人物、建物の一部、料理や商品のディテールも撮りやすくなります。

3倍望遠で撮影した公式作例。画像:Insta360公式サイト
10-bit I-Logと公称14ストップのダイナミックレンジにも対応します。GO Ultraが撮影後すぐに共有しやすいカメラだとすれば、Luna Ultraはカラーグレーディングまで含め、映像を本格的に仕上げたい人にも向く設計です。
取り外せる2インチ画面がLunaらしい

画面を外し、最大約20mの範囲で構図確認や操作ができる。画像:Insta360公式サイト
背面の2インチOLEDタッチスクリーンは、本体から取り外してリモコンとして使えます。カメラを三脚に置き、手元で構図を確認したり、離れた位置から撮影を開始したりできます。画面側にもマイクが内蔵されているため、カメラから離れた状態でも音声を収録できます。
3軸メカニカルジンバルとDeep Track 5.0を搭載し、人物や動物を追尾します。GO Ultraの電子式補正とは異なり、レンズ部そのものが動いて水平と構図を保つため、歩き撮り、自撮り、商品紹介に向いています。
本体重量はブラックが約233g、ホワイトが約235gです。47GBの内蔵ストレージに加え、最大1TBのmicroSDカードを使用できます。画面とWi-Fiをオフにした1080p/24fps撮影では、公称最大240分の連続撮影が可能です。また、約23分で80%まで充電できます。
Luna Ultraの初期評価
海外の先行レビューでは、1インチメインカメラの画質、望遠の使いやすさ、手ブレ補正、写真機能が高く評価されています。一方で、小型ジンバルカメラとしては重めであること、着脱式画面が構造を複雑にしていること、初期ソフトウェアのフォーカス操作や補助表示には改善の余地があるという指摘もあります。
発売から数日しか経っていないため、評価が定まったとはまだいえません。熱対策、長時間撮影時の安定性、追尾精度、アプリ連携については、一般販売後のファームウェア更新や長期レビューを確認したいところです。
Insta360の中ではどれを選ぶべきか
GO UltraとLuna Ultraだけを比べても、Insta360全体での位置は分かりにくいかもしれません。代表的な製品を用途別に並べると、次のようになります。
| シリーズ | 製品の特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| GO 3S | 約39gの超小型4Kカメラ | とにかく軽さを優先し、短いPOV動画を撮る人 |
| GO Ultra | 高画質化した装着型カメラ | 子ども、ペット、旅行、サイクリングを自然に残したい人 |
| Ace Pro 2 | 耐久性に優れたスタンダード型アクションカメラ | スポーツ、水中、激しい動き、耐久性を重視する人 |
| X5/X4 Air | 360度カメラ | 撮影後に画角を決めたい人、見えない自撮り棒を使いたい人 |
| Luna Ultra | デュアルレンズのジンバルカメラ | Vlog、人物、旅行、商品撮影で構図とズームを重視する人 |
GO 3SとGO Ultra
軽さならGO 3S、画質とバッテリー性能、microSDカードの扱いやすさならGO Ultraです。帽子に着ける時間が長い人はGO 3Sの軽さが有利です。胸元やバッグへの装着が中心で、夕方や室内も撮るならGO Ultraの価値が高くなります。
Ace Pro 2とGO Ultra
Ace Pro 2は、カメラを目立たせず日常を撮る製品ではありません。その代わり、激しいスポーツや水中など、カメラ自体に強さが必要な場面で安心です。GO Ultraは日常の目線、Ace Pro 2はアクションの記録と考えると選びやすくなります。
XシリーズとGO Ultra
X5やX4 Airは、全方向を記録して後から被写体を選べることが最大の魅力です。撮影時にカメラを正確に向けなくてよい反面、編集工程は増えます。GO Ultraは撮った方向がそのまま映像になるため、撮影後の編集をより手軽に済ませられます。
Luna UltraとGO Ultra
この2台は、どちらが上かではありません。GO Ultraは「その場に参加しながら撮る」カメラで、Luna Ultraは「画面を見て作品として撮る」カメラです。
手を使わず、視線に近い映像を残したいならGO Ultra。構図、ズーム、人物追尾、Log撮影を重視するならLuna Ultraです。両方を使い分けるなら、GO Ultraをサブカメラ、Luna Ultraをメインカメラにする組み合わせも合理的です。
DJIなど他社製品との違い
GO Ultraの競合にはDJI Osmo Nanoなどがあり、中国では価格競争も激しくなっています。Luna Ultraは、DJI Pocketシリーズが先行する手持ちジンバルカメラ市場に参入した製品です。
ただし、Insta360製品を選ぶ理由は本体スペックだけではありません。360度カメラで培ったアプリ編集、AIによる自動編集、複数カメラの素材管理など、撮影から編集までをInsta360のアプリやサービスでまとめやすいことも強みです。すでにXシリーズやAceシリーズを使っている人ほど、この一貫した操作環境を評価しやすいでしょう。
日本で購入する前に確認したいこと
今回紹介しているAmazonリンクは、GO Ultraの標準版ホワイトへつながります。販売者、付属アクセサリー、保証条件、microSDカードの有無は購入時に確認してください。セット名が似ていても、マウントや予備バッテリーの内容は異なります。
Luna Ultraは別製品です。2026年6月14日時点では日本公式ストアで119,800円と案内されていますが、販売開始時期と在庫表示は変わる可能性があります。GO UltraのAmazonページからLuna Ultraを購入できるわけではありません。
まとめ
GO Ultraが中国で人気を集めた理由は、単に小さいからではありません。画質、バッテリー、microSDカードへの対応、Action Podの使い勝手を改善しながら、身につけて自然な視点を残すというシリーズの個性を守ったことにあります。弱点は価格の高さと、GO 3Sより重くなったことです。
Luna Ultraは、1インチ広角と3倍望遠、3軸ジンバル、着脱式画面を組み合わせた、Insta360の新たな主力候補です。ただし発売直後のため、実際の評判が定まるのはこれからです。現時点では、完成された定番というより、Vlogカメラ市場に挑む意欲的な初代モデルとして見るべきでしょう。
日常の中にカメラを溶け込ませるGO Ultraと、撮る人に構図の自由を与えるLuna Ultra。Insta360はこの2台によって、360度映像だけのメーカーではなく、撮影者の視点そのものを選べるブランドになりつつあります。
この記事の情報源について
メーカーの公式情報を中心に、日本語・中国語を含む国内外のレビューや利用者の声を照合して構成しています。