初めてデジタルイラストを描くとき、Wacom以外の選択肢としてよく名前が挙がるのが中国・深圳発のHUIONとXPPenです。どちらも板型ペンタブレットから大型液晶ペンタブレットまで展開し、日本語の製品ページ、ドライバー、サポート窓口を用意しています。
現在の入門クラスは、安いだけの製品ではありません。HUION Kamvas 13 Gen 3とXPPen Artist Pro 14 Gen 2は、フルラミネーション、16,384段階の筆圧、広いsRGB色域、USB-C接続に対応します。一方で、液タブは画面の数字だけで選ぶと、ケーブルが合わない、机に置けない、ショートカットが使いにくいという失敗が起きます。
HUIONとXPPenはどんなブランドか
日本のペンタブレット市場ではWacomの知名度が高い一方、HUIONとXPPenは価格を抑えた板タブ・液タブを世界へ広げた中国系の主要ブランドです。中国国内だけで売れる無名メーカーではなく、日本語ドライバーと国内販売網を持ち、海外の初心者やイラスト制作者にも比較対象として定着しています。
| ブランド | 成り立ち | 世界展開 | 技術・製品の特徴 |
|---|---|---|---|
| HUION(绘王) | 2011年に深圳で創業 | 米国、欧州、日本、韓国、東南アジアなどへ展開 | PenTech、低ON荷重、Kamvas液タブ、Inspiroy板タブ |
| XPPen | 2005年に始まり、現在は深圳のHanvon UGEE傘下 | 公式発表では163の国・地域、利用クリエイター1,000万人超 | X3 Proペン、Artist液タブ、Deco板タブ、Android一体型製品 |
HUION:OEM技術から自社ブランドへ
HUIONは2011年に中国・深圳で創業しました。中国語名の「绘王」は「描くことの王」を意味し、当初は電磁誘導方式のデジタルペン技術を使ったOEM・ODMも手掛けながら、自社ブランドの板型ペンタブレットと液晶ペンタブレットを育てました。
初期には2.4GHz無線を使ったペンタブレットを中国メーカーとして早く投入し、その後はKamvasシリーズでフルラミネーション、広色域、高筆圧、USB-C接続を中価格帯へ広げました。現行のPenTech 4.0は筆圧の最大段階だけでなく、軽い力で線を出すON荷重とペン先の沈み込みを改善している点が重要です。
HUIONが支持される理由は、Wacomの上位液タブより手が届きやすい価格で、13型から大型4Kまで選択肢を揃えたことです。一方、世代によってケーブル、ペン、スタンドが異なり、ドライバーや保証対応への評価も製品ごとに差があります。ブランド名だけでなく、購入する世代のレビューを見る必要があります。
XPPen:日本で始まり、深圳から世界へ拡大
XPPenは2005年に始まった比較的歴史の長いブランドです。ブランドの出発点は日本ですが、現在は深圳を拠点とするデジタルペン企業Hanvon UGEE傘下で、製品開発と世界販売を行っています。公式発表では163の国と地域で事業を展開し、1,000万人以上のデジタルアート制作者へ製品を提供しています。
Artistシリーズでは液タブを、Decoシリーズでは板タブを展開し、初心者向けだけでなく24型4Kなどプロ向けまで製品幅を広げました。X3 Proペンで16,384段階の筆圧を採用し、Artist Pro 14 Gen 2では16:10画面、折りたたみスタンド、ワイヤレスショートカットリモートを一式にした点が特徴です。単純な本体価格ではなく、制作環境をまとめて買えるパッケージで差別化しています。
海外で両社が伸びた背景には、液タブを専門家だけの高価な道具から、学生や趣味の制作者も購入できる価格帯へ下げたことがあります。現在は「Wacomより安い」だけでなく、画面比率、左手デバイス、Android対応、単体で描けるモデルなどで独自性を競う段階に入っています。
比較する2機種
| 項目 | HUION Kamvas 13 Gen 3 | XPPen Artist Pro 14 Gen 2 |
|---|---|---|
| 画面 | 13.3型、1920×1080 | 14型、1920×1200 |
| 筆圧 | 16,384段階 | 16,384段階 |
| 公称色域 | 99% sRGB | 99% sRGB |
| ペンON荷重 | 2g | 3g |
| USB-C映像入力 | 対応 | 対応 |
| スタンド | 構成により別売 | 本体一体型 |
| 向く人 | 軽さと価格を優先 | 作業環境を一式そろえたい |
価格はセールと付属品で変動するため、本体だけでなくスタンド、映像対応USB-Cケーブル、ショートカットデバイスまで含めて比較します。
13型と14型の差は作業領域に出る
16:10画面を採用するArtist Pro 14 Gen 2。画像:XPPen公式サイト
Kamvas 13 Gen 3は16:9のフルHD、Artist Pro 14 Gen 2は縦方向が少し広い16:10です。CLIP STUDIO PAINTやPhotoshopでは左右にツール、下にタイムラインやパレットを置くため、縦1200ピクセルは数字以上に効きます。
ただし14型でも、ノートPCと液タブを同時に置くと机の奥行きを使います。液タブ本体の寸法だけでなく、傾斜させたときの奥行き、キーボードを手前へ置けるか、利き手側に肘を置けるかを測ります。毎回収納するなら、865gのKamvas 13 Gen 3のほうが扱いやすい場面があります。
筆圧の数字より最初の一画を見る
両機種とも16,384段階を掲げますが、筆圧段階が2倍なら絵が2倍うまくなるわけではありません。見るべきは軽く触れたときに線が出るON荷重、ゆっくり斜線を引いたときの揺れ、ペン先とカーソルのずれ、ペン先の沈み込みです。
HUIONのPenTech 4.0は2gのON荷重と0.35mmの沈み込みを公称し、XPPenのX3 Proは3gのON荷重、中央±0.4mmの精度を示します。細い線から描き始める人には軽いON荷重が効き、線画より塗りが中心ならショートカットや画面の見やすさの差が大きくなります。
店頭で試せない場合は、返品条件を確認し、最初に自分が普段使うブラシで低筆圧の線、ゆっくりした直線、画面四隅のカーソル位置を確認します。
色域99%だけでは色は決まらない
99% sRGBはWeb向けイラストの基準として十分ですが、色域の広さと色の正確さは別です。工場校正、表示モード、輝度、部屋の照明、PC側のカラープロファイルで見え方は変わります。
Kamvas 13 Gen 3は工場校正レポートとΔE<1.5を掲げ、Artist Pro 14 Gen 2はカラープロファイル切り替えに対応します。納品色を厳密に管理する仕事では外部モニターとの校正が必要ですが、SNS投稿や趣味のイラストなら、画面を過度に明るくせずsRGBモードで使うことが先です。
USB-C一本接続には条件がある
「USB-C対応」は、手元のUSB-Cケーブルなら何でも映るという意味ではありません。PC側の端子がDisplayPort Alt Modeに対応し、ケーブルも映像と必要な電力を通せる必要があります。充電専用ケーブルでは映像が出ません。
Kamvas 13 Gen 3の標準構成には3-in-1ケーブルが含まれ、USB-C to USB-Cケーブルは別売の場合があります。Artist Pro 14 Gen 2はUSB-Cと3-in-1の両方に対応します。ノートPCの端子仕様が不明なら、HDMIとUSBを使う3-in-1接続を前提にコンセント数と配線を確認します。
Android接続も端末側がUSB 3.1とDP 1.2相当へ対応することが条件です。単にUSB-C端子があるスマートフォンでは判断できません。
ドライバーは購入前に確認できる
液タブは本体だけで完結せず、ドライバーがOS更新へ追随する必要があります。購入前に自分のOS向けドライバーが現在も配布されているか、更新日、既知の問題、問い合わせ先を確認します。
以前使っていた他社ペンタブレットのドライバーが残っていると競合することがあります。最初の設定では旧ドライバーをアンインストールし、再起動後に新しいドライバーを入れます。ペン位置がずれる場合は、複製・拡張表示の選択、画面割り当て、縦横比、OSの表示倍率を順に確認します。
ショートカットと姿勢が作業時間を決める
液タブはキーボード、左手デバイス、スタンドを含む机全体で考える。画像:XPPen公式サイト
Artist Pro 14 Gen 2は折りたたみスタンドとワイヤレスショートカットリモートを含む構成が特徴です。Kamvas 13 Gen 3は本体を軽く抑え、必要なら別売スタンドやKeydialを追加できます。
長時間描くなら、付属品の多さより手首と首の角度が重要です。画面を寝かせすぎると首が下がり、立てすぎると手首が反ります。椅子、机、画面角度を調整し、肩が上がらない位置へ置きます。
どちらを選ぶか
Kamvas 13 Gen 3が向く人
- 価格と軽さを優先したい
- 毎回机から片付けたい
- 13型フルHDで十分
- 左手デバイスは手持ちを使う
Artist Pro 14 Gen 2が向く人
- 16:10の少し広い作業領域が欲しい
- スタンドとショートカットリモートを一式でそろえたい
- 本体を据え置きで使う
- HDMI接続を含め配線の選択肢を残したい
購入前チェックリスト
- PCのOSとドライバー対応を確認した
- USB-C端子が映像出力へ対応するか確認した
- 机の幅と奥行きを測った
- スタンド、ケーブル、左手デバイス込みの価格を比べた
- 交換ペン先とペンを国内で買える
- 初期不良時の返品先と保証期間を確認した
5万円以下でも、HUIONとXPPenの現行機は趣味から本格的な制作まで使える性能があります。選択を分けるのは筆圧の最大値ではなく、画面比率、配線、付属品、机への収まりです。まず制作環境を測り、その環境で毎日出しやすいほうを選ぶのが失敗の少ない方法です。
掲載したAmazonリンクは、HUIONがKamvas 13 Gen 3の商品ページ、XPPenがArtist Pro 14を探せる公式ブランドストアです。XPPen側は検索結果や在庫によって別世代・別サイズが表示される場合があるため、購入前に「Artist Pro 14 Gen 2」の型番、画面解像度、付属スタンドとリモートの有無を確認してください。
参考資料・情報源
メーカー公式情報を中心に、日本語・中国語を含む国内外の資料を照合して構成しています。